岡崎律子ファンが『十兵衛ちゃん』を観て、歌詞を読み直す
十兵衛ちゃん シリーズ1期、2期。全26話を初見で観終わりました!
大地監督が手がける、変身チャンバラバトル、時代劇ファンタジー、ギャグと感動アニメ。
2期には岡崎さんと堀江由衣さんも。
- 堀江由衣『心晴れて 夜も明けて』 ”素直になって 待つ 自由になる瞬間” →「自由」とは主人公の名前。
- 岡崎律子『凪~peace of mind~』 ”求めていたのは 愛 渡したかったのも 愛” →親子愛と、再生の歌声。
堀江由衣『心晴れて 夜も明けて』 ”素直になって 待つ 自由になる瞬間” →「自由」とは主人公の名前。
岡崎さん関連作は特に観てしまうのがもったいないとさえ思いがちですが、
前回の堀江由衣ライブツアーで
2期主題歌『心晴れて 夜も明けて』(作詞作曲:岡崎律子、歌:堀江由衣)を聴けて、
その余韻が今年ついにピークとなりました。前記事のラブひなと同様。
CDリリース時インタビュー
━━岡崎律子さんの詞で、言葉のひとつひとつが印象的です。
堀江由衣「夜に不安な気持ちになっても、必ず朝がやってきて、日が昇る時の力強さみたいな明日に向かって行くんだと言う感じですよね」
「『十兵衛ちゃん』の世界に通じている歌だと思います」
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岡崎さんも堀江さんも2期からですが、ここはやっぱり1期から観てみました。
1期主人公はおじゃる丸などで拝見したことのある、小西寛子さんが演じられます。
小西さんをモデルにしたキャラということで、小西さんの演技も良くて、後ほど他の出演アニメも観てみたくなりました。良い出会いだと思っています。
色々あって、2期から主人公の声優が堀江さんに変更となります。
インタビュー
大地監督「あの、『2』を作りたいと前から思っていて。まあ、役者をどうしようかなと。 『1』は役者ありきであの役をつくったのがあったから、その意味で封印をしていたんですよね。 で、漫画の方で続きを連載していたんですけど。 始めた頃に『フルーツバスケット』をやって、あ、堀江さんなら出来るんじゃないかとちょっと思っていて」
本田透で聴けた女神のように慈しみのある声も、真逆の貴重なバトル低音ボイスも聴けます。齋藤彩夏さんCVキャラとの掛け合いも!
1期2期、どちらも素晴らしいのですが、
2期で主題歌が『心晴れて 夜も明けて』になるのです。
元々好きな曲ですがアニメを観てから聴くと、気付きがありました。
『心晴れて 夜も明けて』
「好き キライ 行く やめる また迷うこのキモチ
素直になって 待つ 自由になる瞬間」
自由という言葉。
もどかしさを超えて、決心をして羽ばたく曲というイメージでしたが、
主人公の名前が「菜ノ花自由」であり、「自由」とは自身のことなのです!!!
300年もの間、恨みから成仏できない剣豪たちがいます。その戦いに菜ノ花自由は巻き込まれます。
勝手に「2代目 柳生十兵衛」として選ばれ、戦いたくないけれども、変身して戦わないといけない宿命を与えられることになります。
自由「あのねえ、怒りますよ。私は柳生十兵衛なんかじゃないの。
パパが愛情込めて呼ぶ時に『じゆうべえ』って呼ぶの!『じゆうべえ』が訛って『じゅうべえ』ってなったの」
自由「天下にその名を轟かせてどうするの? 私は菜ノ花自由だけで精一杯なのに」
その葛藤の中で、あるいは親子関係の問題の中で、揺れ動く。
『心晴れて 夜も明けて』
「風が吹きすさぶの でも平気
ときどき進めない もがくけど なにか立ちはだかるけど
私を試すけど 幸せはどこにでも待ってる」
「菜ノ花自由」として生きたい、しかし「二代目 十兵衛」として変身して戦うべきだと言われてしまう。
その気持ちを解き放つかのような楽曲だと感じます。
岡崎さんが晩年の時期に作られたとわかる、達観したような目線も醸し出しています。
インタビュー
堀江由衣「いろんなことがあるけど明日はちゃんと来るんだから行こうよ、って言う前向きな気持ちが感じられる曲で、
本当にヒロインの菜ノ花自由ちゃんそのままのイメージの曲だなって思います」
追記。
堀江さんのアルバム「楽園」では『心晴れて 夜も明けて』の後に『笑顔の連鎖』に続きます。同じく岡崎さんによる作詞作曲。
岡崎さんが堀江さんのアルバムに関わったのはこれで最後ですが、リリースから長きに渡り愛され、2018年の堀江由衣ファンクラブ内で行われた好きな曲アンケートでも1位。
『笑顔の連鎖』
「思い出してくれる時 それが笑顔だといいな
きみが言った一番好きだと」
「運命ってきっとあるんだと思うの」
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ギャグギャグギャグ、シリアーーースシャグギャグギャグ、シリアーーーーーーースギャグ。というアニメで、
切り替わりが早く、緩急が凄まじい 笑
しかし堀江さんのインタビューで、自由だけが周りのキャラのテンポについていけない様子がある、みたいなことを説明していて、
その自由視点のノリがうまく反映されたのだなぁと、とても納得しました。
監督いわく流行っているアニメのようにはしない、という意志もあったようです。
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岡崎律子『凪~peace of mind~』 ”求めていたのは 愛 渡したかったのも 愛” →親子愛と、再生の歌声。
そしてなんと言ってももう1曲、岡崎律子さんファンとして大切な曲があります。
挿入歌『凪~peace of mind~』(作詞作曲、歌:岡崎律子)です。
大地監督も毎年のように例の日に聴いて、岡崎さんを想っているそうです。
大地監督は十兵衛ちゃん1期と2期の間に、『フルーツバスケット』を監督として制作しており
「作品にあった主題歌がいただけることはあったりなかったりする。だからここまで作品のために作っていただいた曲は、何度も流したくなった」
とフルーツバスケット楽曲について語っていたことがありました。
さらに今回に関しては、
監督自ら手掛ける2期の脚本が、途中で行き詰まっていた時、この作品には岡崎律子さんの歌が必要だと思って依頼されたようです。
そのため相変わらず挿入歌としての、使い方が良い意味でずるい!笑
2期の8話で初めて、最初は岡崎さんのスキャット/コーラスを全面に出したインスト版が使用されます。続く9、10話でもインスト版で焦らされて、
満を持して、11話、12話でボーカル版が流されます!
つまり合わせて5話連続で使われるのです!!
毎回泣きまくりました。
これには経緯があり、
音響監督によると、『凪~peace of mind~』は「再生の曲」である。
当初8話で使おうとしたが、8話では自由を二代目 十兵衛としての役目を与えようとするキャラの一人「鮎之介」は自由から拒まれ、不本意ながら悲しい結末を一度迎えてしまう。
だからまだ、本来使うには早い。
あらためて11話でやり直した自由は、ついに鮎之介を救うことが出来た。
ここで初めて、岡崎律子という「再生の歌声」を入れようと考え直した。
と、音響監督である たなかかずやさんが語られたとのこと。
今もなおファンの背中を押し続け、支えになってくれている岡崎さんの音楽。
重要な位置づけを持って起用され、相互関係で作品が完成されていき、物語における再生の象徴になるだなんて、こんなに嬉しいことはありません。
フルーツバスケットの高屋さんやラブひなの赤松さんが、アニメ化で提供された岡崎さんの音楽を聴きながら、続きを制作したと仰っていたのと似たものを感じます。
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自由は子供の頃、母を病気で亡くしています。1期では
自由「会わなかったことにすれば、お別れも寂しくないと思って」
というセリフも放つことがあります。
それが物語が進むにつれて、色んなキャラへの愛がお互いに深まっていきます。
『凪~peace of mind~』
「偶然と思えた出来事さえも
偶然じゃなかった こうして逢えた」
自由も、鮎之介も、
自由と争うことになる「フリーシャ」というキャラも、
全員親との別れを経験しています。
『凪~peace of mind~』
「あなたに包まれて 私は 今 ただの私
何度も何度も名前を呼んだ
ココロに降る雨 つめたかったの
心ごとあずけて
からだの重さも あずけて
こうしたかった こうなりたかった
胸と胸かさねて」
自由は、母親が亡くなっただけでなく、父親とのすれ違いもあります。
鮎之介は、父親・鯉之介から二代目 十兵衛のことを託され、ただその役目を果たすためだけに生きてきました。
フリーシャは、初代 十兵衛の娘です。しかし二代目に選ばれたのは自由です。
300年の重み。
『凪~peace of mind~』
「愛していた 愛してるよ
たとえ どんな目にあおうとも
すべては許され いつか溶ける
たどりつく場所がある」
心が、あるいは命そのものが、一度親と離れてしまったと思う。
でも、ただもう一度、認めてもらいたかった、抱きしめてもらいたかった。
いつかまた、夢でも抱きしめあうことができれば。
彩(父親)「パパにはもう、思いつかない。どうしたら、お前のパパになれるのか……」
自由「ごめん」
彩「お前が謝ることはない。ああいう時は泣いてオロオロするのが父さんの役目だから」
自由「パパだもんね」
彩「ああ、お前が泣くぐらいならパパが泣く」
『大切なもの』※カップリング曲 (作詞:有森聡美)
「人は何故 求める事そればかりを考えてるの? どうして与えないの? 」
「巡る季節には 温もりや優しさがある
それが答えだと 知った時
何よりもそっと 抱きしめよう」
自由が役目を終えたくて、ただ逃げてしまうシーンについて。
自由「ママ……。私はただ……ここに、いたい……。ただ……ママと、いたい」
姿が似た「御影」というキャラに縋ろうとします。でも母親は現実にいないのです。
選択することが怖い、どちらを選んでも嫌だ。
一度父親のことも認識していない素振りを見せます。
しかし父親はそんな自由の甘えを、つらくも背中を押します。
彩「いいんだ、逃げても。逃げろ逃げろ。人間、逃げたい時はいくらでもある」
「自分で決めろ。自分の進路は、自分で決めろ。」
「なんだ、失敗がこわいのか。失敗してもいい、自分で決めろ。失敗はな、失敗しないとわからないだろ。失敗したらやり直せ、何度でも」
「お前はいつだってそうしてきたよ、それが菜ノ花自由だろ。それがパパのじゅうべえなんだよ」
『心晴れて 夜も明けて』
「でも平気」
「涙ぐんだり 笑いあったり
戦いもやすらぎも すべては まだ途中
歴史は今日も続く 続く
くり返される営み」
堀江さんは「でも平気」の歌い方に気を配ったと仰っています。
『シベリアから300年の愛をこめて』※キャラソン(作詞:大地丙太郎【監督】)
「やさしい春の ひだまりに似ている
微笑む顔見て ほっとしてた」「歴史の年月を 15才で割った
重さを感じて 涙こぼれた」
この作品における一番の愛とは
親子愛、そして特に子から親への救済の望みです。
『凪~peace of mind~』
「汚れずに歩いて たとえ なにを見たとしても
思い出して ねえ どんな時も
求めていたのは 愛
渡したかったのも 愛」
このフレーズこそ!
改めてこの曲を聴いてみて。
使われている単語的にも、岡崎律子さんが色んな作品のために提供してきた歌詞の、結晶のような雰囲気だと感じました。