岡崎律子ファンが『ラブひな』を観て、歌詞を読み直す
~前提~
アニメ版ラブひなといえば、大切な岡崎さん提供作品なので、
ここぞという時のために観ず長らく温めていたのだけど、
前回の堀江由衣ライブツアーで珍しい生バンド版の『Happy happy*rice shower -type yui-』および堀江由衣 FCイベント、
KING SUPER LIVEで林原めぐみさんが『サクラサク』など
ライブで聴いてから、感動と多幸感という余韻がずっと残っていて、楽曲背景を知ることの機運がどんどんと高まりました。
多分作品自体は世代では無かったのだけど、以前から岡崎さんのCD、林原めぐみさんのCD、堀江由衣さん(以下 ほっちゃん)のCDから派生し、
ラブひなCDも集めたことがあり、もともと良い曲が多いとは知っていました。
この頃ぐらい時代のほっちゃんボーカルは、特に「なる」として歌ったキャラソン及びラブひな楽曲の、歌い方・声質がトップクラスに好きです。
きっかけや余韻は色んな作品へ波及しています。
どの作品に対しても、岡崎さんの曲として聴いていたのを、作品曲としても聴くことで上書きせず、どちらの解釈も大事にしたいという気持ちもあります。
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~今回観たもの~
ラブひな TVアニメ版 全24話
未放映分 OVA 全1話
ラブひな Again OVA 全3話
所要時間 12時間程度。
原作漫画にないオリジナルストーリーが意外と多く、アニメ版ならではの特殊な世界観を知れました。
キャラデザもアニメ独自で、直接的なお色気要素も抑えられています。唯一Againは原作に似せた絵柄に。
岡崎さんの提供楽曲はもちろん、他も改めて色んな挿入歌・キャラソンが良く、使われる箇所も新鮮でした。
ヒロインこと、なる(CV:ほっちゃん)はアイドルデビューするし、その曲が『笑顔の未来へ』とか。
出演声優が歌うキャラソンもあり、やまとなでしこ*3や米倉千尋さん*4までもいます。(ただアニメ終了後の新曲や別バージョンも沢山あるので、ヴォーカル・コンプリート・ボックス「届け、私たちの歌」→ OKAZAKI COLLECTION→ ライブDVDなども聴くとよい。音楽がテーマじゃないのに、なんて歌の数に恵まれたラブコメなんだ!)
岡崎さん提供のラブひな曲は、歌詞的には岡崎さんらしい心情があり、ラブひなを知らずとも自身の曲として聴ける部分が多いのですが、曲調的には今までにないはちゃめちゃさがあり、作品のテンション感を存分に受け継いでいると考えられます。
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●作中で印象的だったのは、夢・思い出などをはじめとする、未来や過去に関連する言葉の使われ方。
10話のセリフ
アマラ・スゥ「『 大人になんかならなくていい』、わっちもそう言って欲しかったなぁ……」
夢については。
最終話のセリフ
瀬田 「約束があるから?それとも無駄だから追い掛けないのかい?」
むつみ「浦島君、もしよかったらずっとここにいてもいいんですよ」
「無理に東大受けなくても、2人で別の大学狙ってもいいし」
「夢に逃げ出さないで、こっちに帰って来たんじゃないですか」
景太郎 「夢は逃げ場所なんでしょうか」
ここで楽曲を参照すると。
「That's so wonderful! 生きてるんだ! やめられない あきらめるだなんて 途方に暮れた昨日にさよなら」
「思い出はいつも甘い逃げ場所 だけど断ち切れ 明日を生きるため」
→ここでも逃げ場所という言葉。
岡崎さんのインタビューによると、
今までにない曲調でご自身でも挑戦やきっかけの曲であり、
原作を読み込んで流し込んで、爆発した気持ちにもっていった。
OP制作時には原作3巻までしか出ていなかったが、曲作りを終えた後もインタビュー時点、自身で7巻まで買い揃えている。
という話が。
アニメ本編が6巻あたりまでの話なので、真面目だなぁあるいは、岡崎さんも好きになってくれたのだなぁ、と思わせるエピソード。*5
すごく表面的に見ればドタバタ&カオスなラブコメ作品……と受け取られかねないのに、
つらくやさしい心情の部分を良く汲み取って歌詞にされているので、下記を含む色んな曲を聴けば聴くほど、物語の厚みが何倍にも膨らむと思います。
ストーリーがさらに進展すると。
「それぞれにそれぞれの夢 いつか来るその日のため 今は深く深く根ざしてる」
と合わせて、
春スペシャル回でのセリフ
景太郎「どんなに素晴らしい夢でも、それは俺たちのものじゃない。瀬田さんの夢もニャモちゃんの約束も、俺たちのものにしちゃいけないんだ。 俺たちには俺たちの約束がある。そして俺たちだけの夢をいつか見つけられればいいんだ。できないことなんてないさ」
→ ここで最終話のセリフや、祝福の歌詞「それぞれの夢」ともリンクしています。
「いつか来るその日」という歌詞は続編のAgainやその先も見据えられて。
また思い出についても。
・最終話後に発売されたCDへ書き下ろされた『イツマデモ♥ドコマデモ』作詞:岡崎律子
「つらい時には思い出しましょう 心うるおすその笑顔」
「思い出がいつでも明日を励ましてる」
↓
●慶太郎となるが両思いになった後の思い出や夢は、逃げ場所ではなく、大切な人の事を想うことでもあり、自分を奮い立たせたり明日へ向かうために大切なものと思えるようになっていったのでしょう。
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人を(好きだと)想う気持ちについて。
●アニメ版では勉強や研究シーンはあまりなく、景太郎となるのラブコメやアニメオリジナル脚本の空想かつ幻想的な物語が印象的でした。
↓
・ED『君さえいれば』作詞:岡崎律子
「ここは陽の当たらない場所 ひとりきりで泣く時の秘密の場所」
「このままじゃ終われない 約束がある」
「叫ぶように名前呼ぶんだ 君がいなけりゃ 君さえいれば」
→岡崎さんのインタビューによると、
(辛い時に)たったひとりでもひとつでも、信頼できるものや魅きつけられるものがあれば、もう一度頑張ろうって気持ちになれる。
誰かと一緒にいても心の中は見えない、笑っているけど心のなかには何かを抱えているかもしれない。
という自身の思いを表現したと語られています。
ラブコメ作品において、ひとりきりの秘密の場所という言葉を使うのが岡崎さんらしくて、いつも女性ヒロインの視点に立った、そのキャラのための曲を用意してくれます。
・クリスマススペシャル回 挿入歌 『WINTER WISH』 作詞:米倉千尋
「小さな幸せを大事に温めてた」
「It's so lovely day! 誰もいつか謎を解くのね それはそれは なんてステキなことだと思うの」
「君がいた夏 日なたと風の匂い 目を閉じれば すぐに逢える
声をかけてね もしもさみしい時は 楽しくなる術を知ってる」
→景太郎がなると両思いになったことで、むつみは結ばれませんでした。
それでもむつみらしい、そして岡崎さんらしいやさしさに溢れていて。むつみや物語を救済しようとしているかのよう。
よく、作者がいなくなった後も作品はのこる、と言います。キャラクターも同じなのかな、と思いました。
たとえばこのむつみも、メインから外れ、途中離脱するキャラクターです。
しかし、このキャラソンがあるおかげで、聴くたびに思い出せる気がします。
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●続くラブひなAgainでは、景太郎は考古学に興味を持って夢を見つけたと言って旅に出ます。ただしなるは研究よりも自分に関心を持って欲しい、そばにいて欲しいとも思っていて……。
↓
・Again OP『キラリ☆宝物』作詞:雲子
「"キラリ" 光る 夢を 大切に抱きしめて すべてが素敵な宝物 未来描く太陽 いつまでも心に 一歩づつ 向かって行こう 明日へと・・」*6
・Again ED 『be for you, be for me』作詞:伊藤千夏
「どんな時も心はあるよ そばに だからわたしがいる あいをさがしている ふたりなら やさしいナミダに変わる 夢はきっと叶う」
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●最後に、全体を俯瞰した上で聴きたい 3曲 + 再掲の2曲。
・挿入歌 『約束』 作詞:有森聡美
「季節は経ってしまったけれど 変わらずあの頃の あなただと願っています」
「戻れるならば どうかもう一度『約束』してね、信じながら祈ってます。」
→約束から始まった物語というのもあり、なるのテーマ曲といえるような印象に残る挿入歌。約束〜eternal promise〜として本人アルバムにも再録。
・イメージソング『Happy happy*rice shower』作詞:椎名可憐
「どんなに ささやかな しあわせでも 降り積もったら 夢に届くよ」
「『ありがとう』いつも言えない だけどね『感謝してる』ささえてくれてる仲間たち」
「だからね 皆にもしあわせがね 降り注ぐように 魔法をかける」
→なるが普段は照れくさくて、めったに見せない感謝の言葉が歌で語られる。ラブひな外でも人気曲。Happy happy*rice shower-type yui-として本人アルバムにも再録。
・ラブひなファイナルライブ販売CDとして書き下ろされた『Friendship』作詞:岡崎律子
「時にひとりになりたくて 旅をしても 心は埋まらない そして 大切な人に気づくよ」
→ストーリーにリンクする
「君がくれた たったひとことがどれほど嬉しかったか ずっとずっと覚えてる」
「いつか離れて暮らす日がきても きっと友達 誰よりもいつも近くに感じているから」
「きっと 君が その憧れや願いを叶えること ずっとずっと信じてる」
→ファイナルライブということもあり、作品からファンに対してのメッセージに聴こえます。お別れや卒業ソング的。
また、将来の景太郎&なるがひなた荘メンバーに対しても、いつか終わりや別れは来るのでしょう。
まさにそんな気持ちがこめられた新曲が、ストーリーを超えて贈られたのです。
・『サクラサク』
「走れ走れ 愛を手にするまで それで苦しむなら望むところ」「祝福の時は来る 手をのばして 両手あげて」
・『祝福』
「人生は時に厳しく それにも増してすばらしい ... やめられないほどすばらしい! エンドレスにすばらしいのさ!!」
岡崎さんがのこしてくれたエールを胸に、素敵な思い出を大切にしながら、つらさを乗り越えて明日へ向かいたいなと思うのです。
また、今年1月9日に林原さんが岡崎さんについて語られていて、すごくタイムリーでした。
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~脚注~
*1: その時のツイート
今回のキンスパでも、岡崎律子さん曲をまたなんらかの形で聴けたらなと思っていたので、サクラサク最高でした。イントロで一瞬意識が途切れた
— あーちぇ (@ar_yoppi)
堀江由衣ライブツアー 愛知→大阪 千秋楽
今回のツアー、日付変わり今日の千秋楽が終演するまで詳しくは言わないけれど、とにかくほっちゃんと三嶋さんにありがとうございます、な内容でした。
千秋楽があえてか運命か、岡崎律子さんの誕生日でもあるというのが何だか良いなあ、と思いながら。— あーちぇ (@ar_yoppi)
→岡崎さんの誕生日について、ライブ中 『For フルーツバスケット』をカバーされた後のMCで「存じ上げています」と発言あり。
2021年 堀江由衣FCイベント 黒ネコ集会 Vol.20
ほっちゃんといえば、今週も改めて配信観た『堀江由衣FCイベント 黒ネコ集会 Vol.20』は、新曲発表で『虹が架かるまでの話」(次いつ歌うかわからないとの注)を聴け、Adieu→ヒカリの新旧繋ぎが格好良かったり、スコールクロール/マッシュルームマーチ/Happy Endみたいな久々の曲もあり熱かったですね!
— あーちぇ (@ar_yoppi)
*2:そして、2020-2021年頃から始まった『D4DJ』という作品の音ゲーにも、カバーではありますが岡崎さん関連楽曲が『サクラサク』をはじめ3曲入曲しています。ライブでも3曲分のカバーを2度ずつ聴かせて頂きました。
*3:田村ゆかり&堀江由衣の伝説の声優ユニット。作中でアイドル的な演出でした。ラブひなでの挿入歌はカップリングの『恋の天使 舞い降りて』ですが、このシングルのメイン曲は岡崎さん提供の『Merry Merrily』だという繋がりが
*4:ちなみに自分が初めて買った、アニソン女性ボーカルCDがちっひーの曲だったりします(ガンダム)
*5:●岡崎さんの提供時の主義として、
職人では無いから自分の気持ちが大事。提供する人や作品との共通点を見つけられたり愛するくらい好きになれるように仕事をしたい。掛け持ちやコンペでなく密接に関わりたい、
というのがあります。
そのため大抵は1曲だけで終わらず、長く複数曲に渡って提供する事が多いです。
●作品資料など徹底的に読み込むが、その一方で歌詞に書かれた感情はすべて岡崎さん自身から来たものだったり、頭に浮かび上がった景色を大事にしたり、その時思っている気持ちを書いているとのこと。
作品曲に関わらず、「岡崎さんの曲そのもの」として聴いても違和感が無いのはこのためではないでしょうか
*7:自分がほっちゃんシングルCDで、初めて買ったのがこの2曲なので思い出深い。その頃はおそらくラブひなのことを知らなかったけれど、ここまで繋がりました。 そしてシスプリの『Love Destiny』も伊東さんの提供。
*8:ストーリーを超えてに関連して。この曲は後ほど、岡崎さんの預かり知らぬところで、『好きっていいなよ。』というアニメのOPとして再アレンジして使用されたこともあります。『まなびストレート!』でも、岡崎さんの曲が元と違うアニソンタイアップとして再度使われたことはあります。あれは林原さんが希望したカバーでしたが、しかし好きなよ。では岡崎さんの歌のまま、伴奏のみが変わったのです。なかなか異例のことなのでこれがきっかけで全話観たことがありますが、人間関係の難しさと暖かさについての普遍的な歌詞は、この作品にもまた合った内容だったと思いました